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井上真悟のざっくり運動生理学講座

こんにちは。24時間マラソン元世界チャンピオンの井上真悟です。

今回の投稿では、私がこれまでコーチとして全国各地でおこなってきたレース対策講座の内容の一部を無料公開します。

まずは、説得力を持って資料をご参考いただく為に

セミナー講師としていつもおこなっている私の自己紹介はこのような内容です▼

そして、常にお伝えし続けてきたことですが、私が過去に「競技者としてどのような記録を出してきたか?」そのものは、何もみなさんのお役に立てることではありません

井上が過去に何百キロ走ろうが、何千キロ走ろうが、それ自体はぶっちゃけ、みなさんにとってはどうでもいいことですよね。

ただし、赤マーカーをつけた3つのレースで得た優勝に至るまでの経験だけは、いまこの記事を読んでいるすべての方にお役に立てるものです。他の実績となにが違うのか?

この3レースに関しては私はただの優勝ではなく、事前に地元メディアに優勝宣言をした上での公言優勝を果たせているからです。

ポイントは、なぜマニュアルのないウルトラマラソンでそんなことができたか?の一点です。

これらのセルフコーチング術は

①子どもにも役立つマラソン学

②やり遂げるための燃料学

③世界ちゃんぴおんのなり方

というタイトルで既に音声セミナーにて公開していますので、まずはそちらを視聴ください▶︎ ながらで学べるセルフコーチングノウハウ無料音声セミナー

そして、いま自信を持ってこのノウハウをブログ越しに多くの方へお伝えできるのは、3年間担当させていただいたサロマ湖ウルトラマラソン大会公式企画、四万十川ウルトラマラソン大会公式企画をとおして指導させていただいたウルトラ初チャレンジの方々が極端な後半失速のない理想的なレースですでに私のノウハウの有効性を実証してくださっているからです。

まずは、トレーニングと練習の違いについて

音声セミナーでもお話ししているとおり、成果を出すためのマラソンとは早い段階で失敗リスクと対策を洗いだし、行動の道筋を整理してから行動してゆくことです。

そしてマラソン大会本番で目標を逃す基本3大リスクはコチラ▼

仮にこの3大リスク対策をすべてやれていたとしても、このような他のトラブルで目標を逃すことはあり得ます▼

そして、大切なことは身体能力を高めるための「(理にかなった)トレーニング」と、失敗経験不足を補うための「練習(シュミレーション)」を混合しないことです。

※これらの考え方について詳しくは、私が2018年神宮外苑24時間チャレンジを2位入賞するまでにおこなったトレーニング実例をふまえ、解説しているコチラの記事をお読みください▼

本番の失敗リスクをすべてたたきつぶすための準備論

走力の内訳をちゃんと理解しましょう

今回の記事では、理に適ったトレーニング方法で効率よく身体能力を高めるために、走力という言葉の内訳を分かりやすく説明します。

私はジャック・ダニエルズの理論を分かりやすく説明するためにセミナーではいつもこのようなプリントをお配りしますが▼

そもそも、走力なんていう能力はありません。

すべての人間は、具体的な5つの能力が異なるため、一斉に走り出せば順位に優越がつきます。

その一つ目が脂肪燃焼効率

ざっくりいうと運動強度60〜70%の有酸素運動(おしゃべりする余裕があるくらい)を日ごろから習慣化できている人の方が、脂肪が燃えやすいのでマラソン大会本番では使えるエネルギー量が多いですよ、という話。週3回の頻度で有酸素運動が習慣化できていることが最も効率的です。

そして2つ目は、VO2max

つまり、最大酸素摂取量です▼

ざっくり言うと心肺能力の高さ。ですが、必ずしも運動強度90〜100%のめちゃキツい有酸素運動でなければ能力が上がらないわけではありません。

確かに心臓という筋肉を鍛えるには、その強度が必要ですが、心臓の負担を減らすために血管の働きを良くすることは、やはり運動強度60〜70%のおしゃべりペース有酸素運動で向上します。

そして、まずはそこをちゃんと習慣化しておくことの方が遥かに安全です。

3つ目の走力は、LT値

つまり乳酸耐性(閾値)です

乳酸閾値とは、筋肉が酸素をとりこみ乳酸に分解する能力の効率。ざっくり言うと疲れにくさの臨界点のことです。

例えば私の場合だと24時間走で世界一になった2010年のレースでは1キロ平均5分16秒で24時間走っていました。なぜこんなことが出来たか?というと、その時の私にとってその運動強度はまだ余裕がありそんなに乳酸も溜まりはじめないそこそこ余裕のあるペースだったからです。計算上、当時の私のLT値はキロ3分32秒だったので、もしそのペースで走りつづけていたら約1時間が限界だったと思います。

なぜなら、人間の身体とはそういうものだからです。コレは謙遜でもなんでもないれっきとした事実であり、ココが科学的なトレーニングをおこなう上で重要なポイントです。

4つ目の走力とは、筋持久力

スタミナという言葉には具体性がないですが、スタミナのあるランナーとは走り込みによって筋線維内にグリコーゲンというエネルギーをより多く貯めることのできているランナーのことです。

コレは、およそ運動強度70〜80%の有酸素運動をすることにより体内の燃料をすっからかんにすることによって、より大きなガソリンタンクを人間は筋肉内に作ることができるというイメージで理解すると良いと思います。

また、それとは別に持久系の筋力トレーニングによっても、長時間、直立二足歩行を保つための姿勢を維持する能力があがります。コレもまた、筋持久力です。

最後に5つめ。フォーム効率です▼

フォーム効率の詳細は、運動生理学というより機能解剖学の話しになってしまうので今回の記事でははしょりますが、端的にいうとその能力は1分間あたりの歩幅(ストライド) × 歩数(ピッチ)の総和で表せます。

要するに、フォーム改善セミナーなどで改善したつもりになれたとしても、具体的にこの数値の改善または同数値時の心拍数の低下がなければ、効果はないということなのです。コレらはすべてGARMIN上位機種ランニングウォッチで具体的に計測ができます。

ざっくり科学的トレーニングのイメージ図

走力の内訳を理解した上で、資料にこのような線を引いてみます。縦軸は運動強度横軸は時間です▼

ランニング初心者の方を例とした場合、まず最初にやるべきことは①と②を向上させるためのおしゃべりペース有酸素運動(例えばジョギング)です。

時間を伸ばしたぶんだけ面積が増えてゆき、やる頻度が多くなれば面積の色は濃くなってゆきます。

この色の範囲と濃さこそ能力です▼

最初はこのように土台の面積を増やすことが大切ですが、それだけだと週3回以上運動が習慣化できている人にとっては非効率。


ジョギング的な強度の有酸素運動に慣れてきたら、④を向上させるための70〜80%強度(だいたいフルマラソン本番くらいのキツさ)の有酸素運動にも取り組んでゆきましょう▼

ジョギングよりはおしゃべりする余裕はなくなりますが、土台ができている人なら、ここまでは能力的にできます。

そして、この強度のトレーニングができれば同じ時間のトレーニングでも面積量は効率的に大きくすることができます。


この繰り返しだけでも、ある程度 面積は大きくなるので良いのですが、欠点はトレーニング時間がたくさん必要になってしまうこと。

このレベルに達した人が自分の限界よりもラクな時間で切り上げた場合、トレーニング効果はほぼありません。

また、ジョギング強度の練習時間を2倍に増やしたから2倍能力が伸びるというわけでもありません。

なので、時短トレとしてぜひ取り組んで欲しいのが③の向上を目的とした30〜60分以内に限定した運動強度80〜90%の有酸素運動です▼

上の図では、人間がほぼ可能な限界点として60分間やった場合の面積をのせていますが、最初から長時間やることよりも20〜30分程度で良いので、運動強度の方を一定に保った方が成果が見込めます。


そして、重要なポイントは「能力向上のための手段は別にランニングじゃなくても構わない」ことです。

例えば、私の場合だとアキレス腱炎で走れなかったにもかかわらず、バイクトレなどのクロストレーニングを積極的におこない昨年の24時間走では世界ランキング6位の成績で日本代表を勝ち取りました。クロストレーニングの詳細はコチラの記事をご参考ください▼

カラダを壊さず成果をだす科学トレーニングの応用


上記の3パターンの運動強度によるトレーニングがバランスよくできている場合、心筋を鍛えるための運動強度ほぼMAXの地獄トレも意味がありますが…▼

故障リスクも増しますので、仮に高い目標を狙う場合でもムリしてやらない方が良いと私は思います。


そして、走力とは…

要するに、この面積の広さと濃さのことです。


これらの能力は、相互に関連しあっており…▼

一つの能力の限界値が分かれば、他の能力の限界値も計算で割り出せます▼

GARMINという時計は、その統計がすべて組み込まれているからこそ、この記事で説明している基本理論さえ理解できていればその後の科学的トレーニングの目安が分かりやすいのです。


そして、もし理に適ったトレーニングを継続することで、運動強度MAX時のパフォーマンスが向上した場合▼

または、LTペースでのタイムを向上させられた場合には▼

自然に、他の能力の伸びしろも増えます▼


つまり、伸びしろの分のトレーニングをしなかった人の面積と▼

伸びしろの分もちゃんとトレーニングした人の面積(走力)を比べれば、後者の方がそもそも面積が多いわけです▼

この面積差を大会本番に根性でどうこう覆すことは基本的に不可能です。だってそもそも、根気がないから面積増やせなかったんだから。

数値化しにくい潜在的な能力について

ランニング時に計測できる分かりやすい能力とは別に、なかなか数値化しづらい分かりにくい能力もあります。

まずは、縦線の下側に筋力、横線の左側に柔軟性と記入しましょう▼

筋肉そのものは、何もトレーニングをしなくても生きているすべての人が持っていますので、筋持久力がゼロの人はいません。


しかし、その能力は長距離ランナーに適した方法の筋力トレーニングを習慣化できれば、少ない時間でも向上が見込めます▼

その場合、向上するのはレース後半のバテにくさや故障のしにくさです。


そして、横軸の柔軟性に関しても、生きて動けている以上、柔軟性ゼロという人はいません。

ココも数値化は難しいですが、ストレッチなどのケアを習慣化することで柔軟性(関節可動域)は、向上します▼


その場合、動きやすさが向上し、関節の負担が減るため、より少ない負担で速いペースを走りやすくなります▼


柔軟性(関節可動域)と筋(持久)力の接点にも隠れた走力があります▼


コレがフォーム効率です▼


つまり▼


そして▼

です。

第2回箱根100k×2DAYsをめざす方へ

私が大会実行委員長を務める202014-5日「第2回箱根100k×2DAYsは、他の大会のための科学的なトレーニングにはなりません。

ナメてかかってはお釣りはでません。準備を怠れば、必ず本番に後悔の残る過酷な実戦です。

私はコレからもみなさんのために有益な情報配信をできるようコーチとして努力してゆきますので、この大会を既に目指されている方は標準を絞り、最善の準備で臨まれてください。

そういう最高にかっけぇ大人たちの背中をみんなで見せてゆきましょう!

この記事を私が作成した今現在(1月8日)の時点で、箱根100k×2daysゴールまでの距離はあと360日と220km!

みなさんへ宛てた私の肉声はコチラをご覧ください▼

201024時間走世界王者井上真悟が描く、2020年金栗四三の全米大陸横断駅伝プロジェクト


井上真悟プロフィール 1980年東京生まれ

• GARMINブランド公式アンバサダー兼ランニングコーチ

• 月刊ランナーズ・サロマ湖/四万十川100kmウルトラマラソン大会公式企画コーチ

• 著書「大陸を走って横断する僕の話。(台湾・木馬出版)」 など

26歳時、父の他界をきっかけに挑んだ通称「世界一過酷なウルトラマラソン」サハラ砂漠マラソンにて2年連続日本人1位となる。その後、ランニングコーチとして児童を対象にしたコーチング経験を積む傍ら、日本全国の児童養護施設へ走って訪れる活動を展開(2007~)出逢った全ての子供たちを喜ばせたいと思い、当時「20代では結果が出せない」と言われていた24時間走に絞った競技活動に打ち込む。2010年、伝説のウルトラランナーと呼ばれていたスコット・ジュレクとのレースを制し、20代初の同競技・世界タイトルを獲得。現在は「2020年・金栗四三のアメリカ大陸5000km横断駅伝」の実現をめざし、精力的に活動中。夢実現の手段として、2018年11月に出場した日本代表選考会を準優勝。まずは、2019年10月フランス開催・24時間走世界選手権で9年ぶりの世界王者に返り咲く予定。

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