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6.162018
ウルトラマラソン終盤のためのエネルギー戦略
まずは基本。レース序盤は、おしゃべり可能なリラックスペースで
1kmのランニングでは、体重1kgあたり1.04 kcalのエネルギーを消費すると言われています。
この数値をもとに計算すると、
例えば、体重60kgのランナーが100km完走するためには、6240キロカロリーものエネルギーが必要となります。
コレはおにぎり約34個分の消費カロリーです。
当然、レース中にそんなにも食べ続けることは出来ないので、大会本番でハンガーノックにならないために、まずは自分の身体のなかにあるエネルギー源を如何に効率的に使えるか?が重要になります。
そのエネルギー源とは、ズバリ脂肪です。
脂肪は、1gにつき9kcalなので、
例えば体重60kg・体脂肪率10%の人の場合でも、54000キロカロリーものエネルギーが身体に蓄えられていることになります。
ただし、脂肪は体内に蓄えられた糖よりもエネルギーに変えにくい物質です。
大会本番は、体内に蓄えられた脂肪をなるべくエネルギーとして転換しやすくするためにもレース序盤は「おしゃべりができるくらいの余裕のあるペース」で脂肪燃焼に必要な酸素を安定して体内に取り込みましょう。
※ 脂肪が燃焼する効率は、①日頃からこのペースのジョギングをバランスの良い頻度でおこなってきたか? ②脂肪燃焼に必要な筋肉の量、質をこれまでのトレーニングで増やしてきたか? によって異なります。
非日常的な距離へ突入する前に始める補給戦略
ジョギングを習慣化してきたランナーほど脂肪燃焼効率がよいため、体内に蓄えられた脂をエネルギー化しやすくなりますが、走り込み練習にしっかり取り組み、特に2時間を超える距離走によってグリコーゲンという糖を蓄える能力を高めてきたランナーは、よりウルトラマラソン本番では有利です。
しかし、それでも元々もっている体内の脂と糖のみでは、100km本番をベストパフォーマンスでゴールするにはまだエネルギー不足です。
レース中に消費した糖を補うためや、そもそも体内に蓄えられた脂をより燃焼しやすくするため、または消化機能ふくめたカラダの調整機能を崩さないためにもレース中は、エネルギーになるような食品や水分、ミネラルの追加補給が必要になります。
今回の記事では、○○を摂ることが特にオススメです。
といった具体的な商品名をあげるようなアドバイスは記載しません。
ランニング用に販売されているジェルやサプリ、BCAAや補給用の飲料など
一つ一つが、研究に基づいた作り手の考えがありますが、
「では、どの製品を選ぶことが最善か?」
の疑問に対して、100点満点の答えはないのではないかと私は思います。個人差もあります。そして、それを練習のなかで自分なりに試行錯誤しながら選んでゆくこともマラソンなのだと私は、思います。
ウルトラランナーに共通して必要なポイントは、何を摂るか?ではなく、どのタイミングから摂るか?です。
オススメしたいのは、エネルギーに転換するための補給分はレース開始から約2時間経過するあたり、そして以後30~45分毎「1クチ程度の補給」を心がけること。
それは、
① そもそも食べたもの、飲んだ水分が体内に吸収されるのにはタイムラグがあるため
② 胃腸が消化できる量は、決して多くはないため
です。
レース開始約2時間というと、トップ集団でおよそ30km地点、サブ10ランナーでおよそ20km地点、完走をめざすランナーだとおよそ15km地点になります。
少し早すぎるかな?と感じてしまうかもしれませんが (お腹すいたな、のど乾いたな)と感じだしてから補給するようでは、大抵エネルギー供給は間に合わずペースダウンにつながりますので早めに小まめな補給を心がけましょう。
レース終盤に食べられるもの、食べられないもの
レース時間の長いランナーやもともと胃腸が弱いランナーほど、「レース終盤に固形物が食べられなくなる」といったトラブルに悩まされることがあります。
コレは、非日常的な運動時間の中で、胃腸の働きが悪くなり消化機能が落ちるためです。
内臓トラブルは、根性論では解決が難しいため下記のページ
も参考に胃腸薬の準備も必要になりますが、
今回の記事で特に、お伝えしたいことは
そんなレース終盤のために、どういう補給食を準備しておくと良いか?の視点についてです。
私自身、100kmのレースでは内臓トラブルを起こすことは少ないですが、メインとして取り組んできた24時間走競技や200kmを超える超ウルトラでは、固形物が受けつけられず苦しい体験をたくさんしてきました。
そんななか自分が口にできたものは、お粥やうどん、用意したサプリは単体では吐き出してしまうので温かいコーンスープや味噌汁に溶かして飲んだり、食べられるジェルもあれば、味が受けつけず、食べられないジェルもありました。片や、競い合っているライバル選手は、バナナやビスケットなどをモリモリと食べていたりもします。
過去15年間、様々な超ウルトラを経験してきて自分なりに導きだした内臓が疲弊してしまうレース後半で食べられるものと食べられないものの見極め方は、ズバリ
自分が風邪で寝込んでいるときでも食べられるものなのかどうか?
だと気づきました。
この視点で、補給食を考えてみることはまだウルトラマラソンを未経験の方にとっても、わかりやすいのではないかと思います。
要するにウルトラマラソン後半では、あの風邪をひいて寝込んでいるときと同じように食欲のない状態に、なりやすいのです。
それさえ理解しておけば、例えレース経験がなかったとしても、これまでの人生経験からレース後半のための補給食を見直すことはできるのではないでしょうか。
あなたが準備した、そのジェルやサプリは、
仮に風邪をひいて寝込んでいるときでも口にすることはできそうですか?
もしくは、大会エイドに用意された食べ物、飲み物のなかで、あなたが風邪をひいて寝込んでいるときでも口にできそうなものは、何ですか?
そして、そもそもあなたは本当に風邪で寝込んでいるとき、どんなものを食べてきましたか?
そこには、個人差や想い出の違いもあるはずです。
ただ、この視点をもっていれば、自分なりに最善の準備をするためのヒントになることと思います。
理屈や理論だけでは通用しないウルトラマラソン後半戦ほど、自分が体調崩して寝込んでいたころに食べた「想い出の味」が、意外とチカラになることがありますよ。